「セールス・イネーブルメント」とは
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近年、B to Bにおいての営業活動が厳しくなっているのは周知の事実です。市場の変化や、不況など、営業担当者は売上ペースを維持するのに苦労しています。50%以上の営業担当者がノルマを達成できず、5年連続でノルマ達成率が低下しているとも言われています。
また、営業担当者が個々のやり方で営業を行っていることで営業の質にばらつきが生まれており、かつ営業情報が共有されておらず不透明な状態、すなわち「営業の属人化」という問題も近年非常に注目されています。 現状維持をしているだけでは会社の経営はうまくいきません。
そこで注目されているのが「セールス・イネーブルメント」という戦略です。営業組織が目標を達成するためには、担当者の生産性や知識、スキルを向上させる必要があります。そのために多くの企業が「セールス・イネーブルメント」への投資を始めています。
「セールス・イネーブルメント」とは
「セールス・イネーブルメント」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 セールス・イネーブルメントとは、広義では『営業活動をテクノロジーの力で効率化し、成果を最大化するための新たな手法・活動・技術』を指します。(出典:ITR White Paper「営業課題の解決に向けた SalesTechの考察」)。
つまり、営業チームが効率よく結果を出すための体系化された手法やテクニックのことで、ビジネスで成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組みのことを指します。具体的には、営業担当者のスキル向上を目的として行う研修や教育、営業時に使用する会社案内、製品カタログ、Webサイトコンテンツといった営業ツールの開発、営業活動の前段階として行われるマーケティング活動も入れることができます。製品やサービスを成約に結びつけるプロセスにおいて、欧米では広く重視されてきた考えです。
61%の企業がセールスイネーブルメントに特化した戦略を活用していると言われており、これは2013年の3倍以上にあたります。そして近年、日本でも注目を浴びており、取り入れる企業が増えてきています。 セールスイネーブルメントを導入した企業からは、「ビジネスを始めた当初から、導入しておくべきだった。そうしていれば、今頃会社のレベルはまったく違ったものになっていただろう。」という声がよく聞かれます。 セールス・イネーブルメントを活用することは、営業活動で成果を出すことにおいて大きな手助けとなるのです。
セールス・イネーブルメント戦略を効果的に構築する方法
セールス・イネーブルメントを導入しても、それが効果的に活用されなければ意味がありません。 ここでは、セールス・イネーブルメント戦略を効果的に実行するための方法をご紹介します。
セールス・イネーブルメントの所属を明らかにする
ほぼすべての企業で、セールス・イネーブルメントは、マーケティングチームと営業チームの両方が担当しています。 そこで、よくあがる質問として、「セールス・イネーブルメントは最終的にどこに属するのか」という問題です。 セールス・イネーブルメントをどこのチームが統括しているのかを明確にすることは、非常に難しい問題です。 しかし、結論から述べると、セールス・イネーブルメントを運用するのに最も適しているのはマーケティングチームです。そして、営業チームからの継続的なインプットとフィードバックをもらうことが大事です。
- 営業チームが見込み客に何をアピールしたいかをマーケティングチームに伝える
- マーケティングチームがセールスイネーブルメントを活用した効果的な営業テクニックを提案する
- 営業チームがその提案を活用して顧客に対して営業活動を行う
上記の手順を繰り返していくという方法が、効率的です。 セールス・イネーブルメントを実行する際は、営業チームとマーケティングの協力が必要なのです。
営業チームとマーケティングチームの業務を連携させる
営業チームとマーケティングチームがしっかり連携することで、ビジネスの成約率が67%向上するというデータがあります。ビジネスを成功させるためには、営業チームとマーケティングチームが協力し合うことが必要不可欠です。
上記で述べたように、マーケティング・イネーブルメントを統括するのはマーケティングチームですが、営業チームがマーケティングチームと同じ情報にアクセスできるようにしておく必要があります。成功するセールス・イネーブルメント戦略は、営業チームとマーケティングチームが共同で構築するものであり、お互いが積極的に協力し、コミュニケーションを図ることが必要です。営業チームとマーケティングチームが同じプラットフォームで作業していない場合や、プラットフォームが統合されていない場合は、両方のチームから情報に簡単にアクセスできるように体制を整える必要があります。
セールス・イネーブルメントのテクノロジーを利用することにより、円滑に連携できるようにサポートすることができます。
そして、セールス・イネーブルメント戦略をさらに強化することができます。 営業活動においては、主に成約した売上の半分は、購買行動の初期段階で見込み客をフォローアップした営業担当者が獲得しています。 もし営業担当者が、そういった場面で見込み客の興味を引きつけようとしていないなら、何千もの見込み客を逃している可能性があります。こうした損失を逃さないために、マーケティングチームと営業チームの連携を強化しておく必要があるのです。 マーケティングと営業のアプローチがどこで重なっているかを理解することで、営業活動を合理化し、見込み客が重複した売り込みや無関係な広告に振り回されて見込み客に不快感を与えないようにすることができます。 また、インバウンドとアウトバウンドで獲得した見込み客を区別するためのオペレーションも必要になります。
案件や顧客情報を一括して管理する
営業担当者が実際に営業活動に費やしている時間は、全体の35%に過ぎないと言われています。 営業活動、見込み客の連絡先、見込み客との過去のやり取りなどの情報をセールス・イネーブルメントにより一括して管理することで、営業担当者の貴重な時間を節約し、より効率的な形で見込み客にアプローチすることができます。 また、これらの情報をフォローアップして保管し、後の営業活動に役立てることも重要です。
営業担当者に適切な教育をする
どんなに優れたセールス・イネーブルメントや顧客情報管理ツールでも、営業チームがその使い方を知らなかったり、あるいは使い方が難しく使いたくないのでは意味がありません。 営業担当者に、営業支援ツールやソフトの価値を教えることは重要です。なぜならば、営業担当者がその価値を理解していなければ、使いたいとは思わないからです。
すべての営業担当者に(※)オンボーディングを実施し、新しいテクノロジーや戦略に関するワークショップを随時開催するとよいでしょう。
オンボーディング
オンボーディングとは、新入社員を企業にとって有用な人材に育成する施策やプロセスのことです。入社後に起きやすい早期離職を防ぎ、社員を定着させる施策という意味も含まれます。 オンボーディングの元の意味は乗り物に乗り込んでいる状態であり、新入社員が組織に含まれた様子を表しています。 (ここでいう「新入社員」には、中途採用者も含みます。) 参考サイト https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0027-onbording.html
さいごに
企業の成功を定義する際に、「セールス・イネーブルメント」という言葉が取り上げられることが多くなってきました。その戦略の定義や内容は企業ごとに異なりますが、企業の成功には不可欠であるという点では共通しています。
セールス・イネーブルメントを効果的に活用するためには、営業チームが効率的に営業活動ができるよう、適切なトレーニングを受けて営業テクニックを身につけて、ときには営業活動を手助けするツールやソフトを利用する必要があります。 つまり、セールス・イネーブルメント戦略を実行することで、より効率的かつ効果的にコンバーションを獲得できるということです。